「主、文をお持ちしました」
「ありがとう長谷部!」
いつもの政府からの伝令の中に、見慣れない封筒がある。そういえば先月政府施設で定期健診を受けたのだった。どれどれ…げ、去年より体重が増えているな…。ちょっと運動しなきゃ。
異常なしの項目が並ぶ中、一か所「要経過観察」の文字が目に入る。
「霊力に多少の乱れあり…?」
政府の健康診断は、体調などの検査だけではなく、審神者の霊力に異常がないかどうかを見るものでもある。霊力に乱れがあるということは何か問題があるのだろうか。
「主、いかがなさいましたか?」
長谷部が私の手元の紙を覗き込む。
「うん……ちょっとね。実は健康診断の結果が届いたんだけど、霊力の数値に乱れがあるみたいで…。」
霊力検査は今まで異常なしだったはず。確か同期の審神者が「生理とかストレスとかでも乱れることあるからな~。」と言っていたような気がする。隠すことでもないので、私は長谷部にも診断結果を見せた。
「なるほど。さほど大きな乱れではないようですが、放置して将来大きな影響が出る可能性が無いとも言い切れないですね。大切な御身に何かあっては大変ですし、対策しておくに越したことはありませんよ。」
長谷部に真面目な顔で諭されて、私もそうだな、と頷いた。
「でも就任してからこんなこと初めてだし、健康数値と違って対策なんてどうしたらいいか…。そもそも霊力なんて意識したこともないし、知識もなくてわかんないよぉ…。」
長谷部の深刻そうな顔を見ていたらなんだか不安になってきた。
「ご安心ください。俺は付喪神ですから、こういったことには多少心得があります。政府の定期健康診断では、簡易的な診断しかしせんからね。付喪神とはいえ俺も神の端くれですから、俺のほうが詳細にお調べできるでしょう。」
任せてくださいと言わんばかりの誇らしげな顔をした長谷部は、失礼します、と声をかけてから手袋を外して私の手を取った。どうやら私の霊力を診てくれているらしい。手袋を外す仕草も上品で少しドキッとする。長谷部はかっこよくて、優しくて、頼りになる。まるで騎士みたいだな…。などと、のんきなことを考えながら長谷部を見つめていると、そんな私の視線に気づいたのか長谷部ははにかんだ。
「どうやら霊力の枯渇が原因では無さそうですよ。確かに少し乱れはありますが、おそらくはご自分の霊力を感知するのが苦手で、うまく体内を巡らせられないことが原因かと。軽い訓練で改善できる程度ですよ。」
「ほんと……?私は霊力とかは正直よくわからなくて…。」
「霊力の扱いでしたら俺がお力になれるかと。この長谷部にお任せ下さい!必ずや主の霊力を安定させて御覧に入れます!」
自信ありげな長谷部の様子を見て、私は少しホッとした。霊力の乱れなんてよくある事とは聞くけど、やっぱりちょっと不安だった。
「大丈夫ですよ、すぐに良くなりますからね。ただ、霊力訓練は慣れないことですから、主もお疲れになることでしょう。すぐに眠ってしまっても良いように、本日は就寝前に伺いますね。ああ、他の連中が主に霊力の乱れがある、などと知れれば大事になるかもしれませんねぇ。念のため人払いをしてから伺います。」
誉桜を散らしてそう言う長谷部は、頼られるとちょっと得意げになるところがあって可愛い。やっぱり長谷部にお願いしてよかったな。
湯浴みを済ませてから、そういえば長谷部は「訓練」という言い方をしていたな、と思い出した。どんなことをするのか見当もつかないが、疲れてすぐに寝てしまう心配をされているし、とりあえず布団は敷いておこうかな。
寝所を軽く片付けて布団を敷きくつろいでいると、襖障子の向こうから声がかけられた。
「主。長谷部です。お約束通り、霊力安定化のお手伝いに参りましたよ。」
襖を開くと内番着姿の長谷部が立っていた。招き入れると、長谷部は失礼しますと声をかけて静かに部屋に入ってきた。なんだか緊張する。
「遅い時間まで迷惑かけてごめんね…。」
「お気になさらないでください!俺は主のお役に立てて嬉しいんですよ。」
ふわりと長谷部が笑ってくれて、こちらもつられて笑顔になってしまう。長谷部はやっぱり優しいな…。
「それで、訓練ってどんなことをするの?」
「主の霊力が体内を滞りなく巡らせられるように、意識づけの訓練をいたします。まずは動きやすい服装に着替えていただきますね。」
そう言うと長谷部はゆるっとした白いタンクトップとグレーのショートパンツを渡してきた。…ちょっと丈が短すぎない?かなり際どい気がする。
「訓練中に霊力が乱れた場合すぐにわかるように、俺と直接触れ合う部分は多いほうがいいのです。なので布の面積はなるべく少ないものをお選びしました。男の俺の前で肌を晒すのはお恥ずかしいかもしれませんが…。」
「そ、そうなんだ…?」
「ああ、それから、下着は着けないでくださいね。」
「え!?そ、そんなの聞いてないよ!?」
驚く私に、まるで常識を教えるみたいに長谷部は淡々と答える。
「今申し上げましたからね。締め付けるものがあると霊力の流れが阻害されて効果が出にくいんです。俺も刀の付喪神ですから、金属の金具があると俺の神気がうまく流せない可能性もありますし。主、これは必要なことなんですよ、お恥ずかしいでしょうが、すべては主のため。俺も早く主の霊力が安定するよう手を尽くしたいのです。どうか耐えてくださいませ。」
ああ、お可哀そうな主、お労しや…と心配する長谷部を見ては何も言えなくなってしまう。
「わかった…長谷部もいろいろ考えてくれたんだもんね。恥ずかしいけど、私も頑張るよ。」
「さすがは主、聡明なご決断です!」
下着をつけないのは恥ずかしいけど、真面目な長谷部のことだから、大丈夫だよね?
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